世界保健機関(WHO)の国際疾病分類において、神経系疾患の難病に分類されています。
慢性疲労症候群の症状は、身体のだるさ、発熱やのどの痛み、関節の痛み、集中力の低下などが見られます。
現在、慢性疲労症候群が発症する原因や確立した治療法は解明されていないため、心理療法や薬物療法などで症状を治していくのが一般的です。
慢性疲労症候群の発症を予防するためには、日々のセルフケアを心がけることが重要です。
日常生活している中で、疲労感や倦怠感が長期間続くと、このような疑問や悩みを抱える方は多いと思います。
慢性疲労症候群は、身体的な異常がなくても、突発的に疲労感や倦怠感などの症状が長期間続く難病です。
現在、慢性疲労症候群が発症する原因や確立した治療法は解明されていません。
しかし、慢性疲労症候群を発症する原因の推測や治療法はいろいろと試されており、治療の効果もみられています。
本記事では、慢性疲労症候群について、特徴や原因、治療法など詳しく解説します。
ご家族や自分自身が慢性疲労症候群の兆候がある場合は、ぜひ参考にしてください。
慢性疲労症候群とは?定義と特徴
慢性疲労症候群(CFS)は、日常生活が困難なほどの疲労感が6ヵ月以上続く疾患です。
別名、筋痛性脳脊髄炎(ME)とも呼ばれており、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類において、神経系疾患の難病に分類されています。
慢性疲労症候群は、20代~50代の社会人女性に多く見られます。
慢性疲労症候群の主な症状は、以下の通りです。
- 睡眠が正常にとれない
- 筋肉や関節の痛み
- 頭痛、発熱、のどの痛み
- 物覚えが悪くなる
- 集中力の低下
- 身体がだるい
- 音や光に過敏になる
慢性疲労症候群の主な4つの原因
慢性疲労症候群が発症する原因は解明されていませんが、発症に影響を与える要因を4つご紹介します。ぜひ参考にしてください。
ウィルス性の感染による発症
慢性疲労症候群は、ウィルス性の感染が原因とみられています。それは、慢性疲労症候群の症状として、発熱やのどの痛みがあるためです。
細菌の種類として、エプスタイン-バーウィルスやヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス[HIV]などが関与しているとみられています。
しかし、発熱、のどの痛みの発症原因は、患者の免疫低下によるものであるという見解もあり、慢性疲労症候群発症の発症に直接的な関連を示す証拠にはなっていません。
そのため、慢性疲労症候群の発症原因が感染症によるものであるという確実な証拠とはなっていないため、更なる研究を必要としています。
免疫系の異常による発症
慢性疲労症候群の発症原因として、人体の免疫システム機能の異常が考えられています。
免疫システムとは、外部から侵入した細菌から身体を守る機能です。この機能が正常に働かなくなると人体に様々な影響が出ます。
例えば、本来なかったアレルギーを発症しやすくなったり、感染症にかかりやすくなります。
精神的な要因による発症
慢性疲労症候群の発症原因として、精神的な要因が関与しているとみられています。
精神的な要因とは、生活環境の中で受けるストレスのことを指し、ストレスを感じる要因は以下の通りです。
- 家庭や職場での人間関係
- 病気やケガなど身体関係
- 不安や悩みなど心理的要因
- 気候や騒音などの環境
日常の慢性的なストレスが、慢性疲労症候群の発症原因として考えられています。
遺伝的影響による発症
慢性疲労症候群の発症原因として、遺伝的な影響も考えられています。
家族内での発症例が多くみられており、遺伝的要因が発症に関与している可能性があります。
同じ環境で暮らしていることで、ストレスへの反応が似ていたり、同じ物に触れることが多いからだと言われています。
慢性疲労症候群の初期症状が分かるチェックリストを紹介
慢性疲労症候群の初期症状が分かるチェックリストをご紹介します。
「該当しない」0点、「少し症状が出ている」1点、「症状が出ている」2点、「かなり症状が出ている」3点でチェックしてください。
各項目、0~6点であれば安全、7~12点で要注意、それ以上の点数になると、かなり疲れていて危険な状態です。
各項目をチェックして初期症状の確認をしてください。
身体的疲労のチェック項目
身体的な疲労項目のチェックリストです。
精神的疲労のチェック項目
精神的な疲労項目のチェックリストです。
慢性疲労症候群の効果的な治療方法
現在、慢性疲労症候群の特効薬は開発されていませんが、患者の症状に合わせた治療方法があります。今から解説しますので、ぜひ参考にしてください。
症状が緩和する薬を使って治療する
慢性疲労症候群の治療法として、薬を使って症状を緩和する方法(薬物療法)があります。
例えば、大量のビタミンCや漢方薬などの栄養投与、抗うつ薬やコルチコステロイドなどの精神を安定させる向精神薬です。
慢性疲労症候群の症状は、個人差があり、症状に合わせた最適な治療が最適です。
薬物療法によって症状を軽くする効果はありますが、確実な治療法ではありません。
考え方や行動を変える心理療法を行う
慢性疲労症候群の治療法として、考え方や行動を変える心理療法(認知行動療法)があります。
慢性疲労症候群の患者は、心理的に後ろ向きな考えや行動をする症状があるため、認知行動療法(CBT)は患者の思考や行動を改善することで症状を軽減させる効果的な治療方法の一つです。
具体的には、「認知」と「行動」を少しずつ改善していく方法になります。
「認知」は、否定的な考え方を少しずつ肯定的な考えに変えていきます。
「行動」は、楽しいことや達成感を味わってもらい、ポジティブな感情を引き出すことで気持ちの向上を図る方法です。
認知行動療法は、成果の高い治療方法の一つとして実践されています。
少しずつ運動量を増やして治療する
慢性疲労症候群の治療法として、少しずつ運動量を増やして治療する方法があります。
適度な運動を少しずつ行うことで疲労を改善し、身体の機能を高めていく方法です。
例えば、近所を散歩するところから始めていき、慣れてくればジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を取り入れます。
ただし、個人の判断で行うのではなく、専門の医師やトレーナーの指示を仰いで行うことが大切です。
食事と栄養管理を行って治療する
慢性疲労症候群の治療法として、栄養管理を行って治療する方法があります。
食事療法は、身体に必要な栄養素を取り入れることによって慢性疲労症候群の症状を軽くしていきます。
食事療法の手順として、押さえるポイントは以下の通りです。
- 消化器官を整える(規則正しい食事、消化に良い食べ物を摂取)
- バランスのとれた三大栄養素の摂取(タンパク質、脂質、炭水化物)
- 身体の潤滑油となるビタミン、ミネラルの摂取(青魚、レバー、ナッツ類など)
- 抗酸化栄養素を含む食品を摂取(ブロッコリー、トマト、ごまなど)
バランスのとれた食事摂取は健康に大きな影響を与えるので、日頃から意識することが重要です。
慢性疲労症候群を予防するためのセルフケアを紹介
慢性疲労症候群を予防するために、普段からできるセルフケアをご紹介します。
慢性疲労症候群は様々な要因で発症しますが、日常の生活の中で防ぐこともできるので、ぜひ参考にしてください。
自分の疲れないペースで日常生活を送る
慢性疲労症候群を予防するために、自分のペースで生活を送ることが大切です。
自分のペースで生活を送ることで心身の安定を保つことができます。
特に生活する上で注意するポイントは、職場での労働環境です。極度の重労働や長時間労働は心身に大きなストレスや負担を抱えることになります。
現状、無理な生活を続けていないか、生活環境を見直すのも一つの方法です。
質の良い睡眠を日頃から心がける
慢性疲労症候群を予防するために、質の良い睡眠をとることが大切です。
睡眠をとることは、人の身体、心、脳を回復させる役割があります。
また、質の良い睡眠は、人の身体と心を健康にする睡眠とされており、様々な方法があります。
質の良い睡眠をとる主な方法は以下の通りです。
- 起床、就寝時間など規則正しい生活を過ごす
- 適度な運動
- 就寝の2~3時間前に入浴する
- 適正な食事管理
- 朝、起床したら日光を浴びる
- 15分の昼寝
- 室内の温度、湿度を一定に保つ
- 自分に合った寝具を選ぶ
バランスの良い食事と負担の少ない運動
慢性疲労症候群を予防するために、バランスの良い食事と適度な運動を心がけるようにしてください。
人体の健康を維持するために基本となる食事と運動ですが、慢性疲労症候群を予防するだけでなく、あらゆる病気を予防するために必要です。
バランスの良い食事とは、1日3食の規則正しい時間にとり、塩分が高く、脂質が多い高カロリーの食事を控え、栄養バランスを考慮した食事です。
適度な運動とは、定期的なウォーキングやストレッチなど身体に負担の少ない運動を指します。
慣れてきたら徐々に運動量を増やしていくことで体力を維持し続けることができます。
慢性疲労症候群でよくある質問
慢性疲労症候群でよくある質問をご紹介します。
この内容を理解することで、慢性疲労症候群を知識をさらに深めることができます。
慢性疲労症候群は難病ですか?
慢性疲労症候群は世界保健機関(WHO)の国際疾病分類において神経免疫系の難病とされています。
現在、慢性疲労症候群の発症原因や治療法は確立されていません。
ただし、慢性疲労症候群は、日本において、指定難病に指定されていないため、公的支援の対象外となっています。
参考:筋痛性脳脊髄炎の根治薬と難病指定の研究促進に関する請願
慢性疲労症候群は何年で治りますか?
慢性疲労症候群の回復は、個人差が大きく、回復までの期間を示すことは難しいですが、数か月から数年かかると言われています。
また、回復はしても完治することは難しく、再発する可能性もある病気です。
様々な治療法がありますが、現在、確立した治療法はありません。
慢性疲労症候とうつ病の違いは何ですか?
慢性疲労症候群とうつ病は症状が重複していることもあり、明確に答えるのは困難です。
一般的に慢性疲労症候群とみられるポイントは以下の通りです。
- 意欲や気力が出ないことよりも、疲労感や倦怠感が強く出る
- 午前中よりも午後からの方が症状がひどい
- 自分を責めたり、イライラすることが少ない
まとめ:慢性疲労症候を予防するには日頃からのセルフケアを意識しよう
今回の記事では、慢性疲労症候群について解説しました。
慢性疲労症候群は、普段の生活を過ごせないほどの疲労感が6ヵ月以上続く疾患で、原因や治療法が未だに確立されていない難病です。
しかし、様々な治療法で病気の症状を軽くすることはできます。また、普段からセルフケアを行うことで症状の悪化を防ぐことも可能です。
家族内や自分自身に慢性疲労症候群の兆候がある場合は、本記事を参考にしていただき、症状の状態に合わせて医師や専門家に相談するようにしてください。