痒みがどのように発生するかは、まだ十分に解明されておらず、確立された治療法も存在しません。
皮膚そう痒症による強いかゆみのために、皮膚をかくと、赤みや腫れが現れたり、傷ができることで二次感染を引き起こす可能性があるため危険です。
外用薬や内服薬を使用して症状を和らげ、食生活やスキンケアを整えることで予防するのが最善の方法です。
日常生活の中で、肌が乾燥して皮膚が痒くなる方は多いと思いますが、長期間痒みが続いたり、夜も眠れないほど痒みがひどい場合、皮膚そう痒症の可能性を疑う必要があります。
皮膚そう痒症は、皮膚に明確な発疹がないにもかかわらず、長期間にわたって痒みを伴う疾患です。
発症原因は明確に解明されておらず、治療法も確立されていない病気です。
皮膚そう痒症による強いかゆみのために、皮膚をかくと、赤みや腫れが現れたり、傷ができることがあります。
その傷が原因で細菌やウイルスによる二次感染を引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。
本記事では、皮膚そう痒症の定義や症状、発症原因、治療法など詳しく解説します。
皮膚そう痒症で悩まれている方は、本記事を参考に、正しい知識を身につけて最適な治療や予防を実践してください。
皮膚そう痒症の定義とは
皮膚そう痒症の定義は、「皮膚病変が認められないにもかかわらず瘙痒を生じる疾患」とされています。
つまり、皮膚瘙痒症は、皮膚に明確な発疹がないにもかかわらず、長期間にわたって痒みを伴う疾患です。
痒みがどのように起こるのかは、十分に解明されていませんが、妊産婦やHIV患者、腎不全や肝臓の病気、血液の病気など他の疾患が原因で発症することが多い病気です。
また、男性より女性に発症することが多く、長期間にわたって強い痒みが続くと、精神的な苦痛とともに、睡眠や仕事など普段の生活に大きな支障をきたします。
治療でよく使われている抗ヒスタミン薬(アレルギーの薬)に効果があるのは、汎発性皮膚そう痒症の患者の一部だけで、治療方法が確立していない病気です。
皮膚そう痒症の症状とは
皮膚そう痒症は、皮膚に発疹や湿疹がないのに、かゆみが生じる病気です。
かゆみの強さは様々で、夜間に悪化することが多く見られます。
かゆみは、全身に広がる場合や陰部、肛門、頭部など特定の部位に現れることもあります。
頭皮のかゆみには、炎症やフケが伴うことがあり、顔や首は敏感なため、かき傷による色素沈着が目立ちやすい部位です。
腕や脚は、乾燥しやすく、冬場はかゆみが強くなります。
また、かゆみは持続的に続く場合もあれば、波のように強弱を繰り返す場合もあり、温度や湿度の変化、衣類の刺激などによって悪化しやすいのが特徴です。
強いかゆみのために皮膚をかくと、赤みや腫れが現れたり、傷ができることがあります。
その傷から細菌やウイルスによる二次感染を引き起こすリスクがあるため、十分な注意が必要です。
皮膚そう痒症が発症する原因を解説
皮膚そう痒症は、はっきりとした原因が解明されていない病気です。
発症の原因と考えられている要因をご紹介します。
乾燥肌による発症
皮膚そう痒症が発症する原因として、乾燥肌(ドライスキン)があげられます。
乾燥肌とは、皮膚の水分や皮脂が不足し、乾燥した状態を指します。
乾燥肌になると、皮膚の機能が低下して肌が敏感になり、痒みを生じやすくなります。
乾燥肌になる主な要因には、乾燥した冬季や暖房の使用、加齢による皮脂分泌量の減少、不規則な生活習慣などが挙げられます。
日々の生活の中で肌の保湿を心がけることが、皮膚そう痒症の予防につながります。
食品や薬による発症
皮膚そう痒症は、食品や薬で痒みを引き起こす場合があるので注意が必要です。
ヒスタミンといわれる化学物質が多く含まれた食品を過剰摂取することでアレルギー反応を引き起こします。
ヒスタミンを多く含む食品は、魚介類、チーズ、納豆などの発酵食品、加工肉、アルコール類などです。
一方、痒みの原因とされている代表的な薬として、オピオイドがあります。
オピオイドとは、強力な鎮痛作用を持つ薬物の総称です。例えば、麻薬製剤やホルモン剤、解熱鎮痛剤などが一般的です。
オピオイドの副作用によってヒスタミンが放出され、痒みを引き起こす原因となります。
内因性の異常による発症
皮膚そう痒症は、内因性オピオイドや内臓疾患など内因性の異常により発症することがあります。
内因性オピオイドは、人の体内で自然に生成される化学物質で、神経系に作用して痛みや痒みを抑える役割を持っています。
この物質のバランスが崩れることで痒みを引き起こす可能性があるのです。
そして、痒みの原因と考えられている内因性疾患は以下の通りです。
- 内分泌性疾患(体内のホルモンバランスに影響を与える疾患)
:糖尿病、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、クッシング症候群など - 代謝性疾患(体のエネルギー生成に影響を与える疾患)
:痛風(高尿酸血症)、肝硬変、慢性腎不全など - 悪性腫瘍(細胞の異常増殖による疾患)
:悪性リンパ腫、内臓癌など - 血液疾患(血液を生成する器官の異常)
:多血症、鉄欠乏性貧血など - 寄生虫症(寄生虫が体内に侵入して引き起こされる疾患)
:回虫、十二指腸虫など - 心因性疾患(心理的、精神的な要因で引き起こされる疾患)
:ストレス、精神的不安など
皮膚そう痒症の治療法を解説
皮膚そう痒症の治療法は、確立されていないため、症状を和らげるための対処療法が一般的です。
今から皮膚そう痒症に効果のある治療法をご紹介します。
外用薬の塗布で症状を和らげる
皮膚そう痒症は、外用薬(保湿剤)の塗布で症状を和らげることができます。
一般的に使用されている保湿用外用薬をご紹介します。
- レスタミンコーワ錠
:抗ヒスタミン作用により、痒みを抑制 - 強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏
:抗炎症作用、細菌感染を阻止する作用、皮膚疾患に伴う痒みを抑える効果 - ベナパスタ軟膏
:ヒスタミンの働きを抑える外用抗ヒスタミン薬で痒みを抑制 - アレジオン眼瞼クリーム
:上下眼瞼(眼周囲)へ塗布する保湿剤で、かゆみや充血などのアレルギー症状を抑える - エピナスチン製剤
:皮膚の腫れや痒み、鼻づまり、咳などの症状を改善する薬
外用薬を塗る際は、強くすり込むと皮膚を刺激してしまいます。
痒みのある部位に薬を少しずつつけ、手のひらや指の腹で薄く伸ばすように広げていくと良いでしょう。
外用薬は、乾燥肌による痒みの場合、症状を和らげる効果が期待できます。
ただし、それ以外の原因の場合は、効果が薄い可能性があるので、他の治療法への切り替えを検討してください。
内服薬を服用して症状を和らげる
皮膚そう痒症の症状を和らげる方法として、内服薬を服用する方法があります。
内服薬は、第二世代抗ヒスタミン薬が処方されるのが一般的です。
第二世代抗ヒスタミン薬は、副作用も少なく、ヒスタミンの作用を抑え、痒みを和らげる効果があります。
主な第二世代抗ヒスタミン薬は以下の通りです。
- アレグラ錠(塩酸フェキソフェナジン)
- アレジオン錠(塩酸エピナスチン)
- ジルテック錠(塩酸シチリジン)
- クラリチン錠(ロラタジン)
- ビラノア錠(ビラスチン)
- ルパフィン錠(ルパタジン)
一方、漢方薬を服用する方法もあります。
漢方薬は、身体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで不調を治すことを目的とした薬です。
例えば、消風散(しょうふうさん)や当帰飲子(とうきいんし)、六味丸(ろくみがん)などがあります。
自分の身体に合った内服薬を見つけて、症状を改善しましょう。
光線療法で症状を和らげる
皮膚の光線療法を活用して症状を和らげる方法があります。
光線療法とは、特定の光線(紫外線など)を症状の出ている部位に照射することで、皮膚疾患などを治療する方法です。
光線療法のメリットは、他の治療方法に比べて副作用が少なく、高い治療効果が期待できる点です。
デメリットとして、継続的な治療が必要で、皮膚の色素沈着が起こる可能性があります。
外用薬や内服薬で期待する効果が出なかった方は、医師との相談の上、光線療法を活用してみるのもおすすめです。
皮膚そう痒症の予防法を解説
皮膚そう痒症を予防するためには、日々のセルフケアや生活習慣が大切です。
皮膚そう痒症の予防法について解説するので、日々の生活を見直してみてください。
毎日のスキンケアを心がけて肌を守る
皮膚そう痒症を予防するには、日々のスキンケアを心がけることが重要です。
スキンケアの具体的な方法として、以下の方法を参考にしてください。
- 毎日入浴して皮膚を清潔に保つ(ぬるま湯で、優しく洗う)
- 入浴後、保湿剤(化粧水、乳液など)を使用して肌を保湿する
- 日焼け止めを使用して紫外線から肌を守る
- 自分の肌に適した保湿剤を選ぶ(乾燥肌用、敏感肌用など)
- 肌の老化を早める要因となる喫煙を控える
毎日良質な睡眠をとって体調を整える
良質な睡眠は、肌の健康を守る上で重要です。
睡眠は、筋肉や細胞の修復、免疫システムの活性化、脳内のリフレッシュなど、多くの効果をもたらします。
そのため、睡眠不足やストレスは、皮膚の免疫機能を低下させ、痒みの症状を悪化させる要因になります。
毎日7~8時間の睡眠を心がけ、規則正しい生活を維持することが重要です。
栄養バランスのとれた食事を普段から意識して摂る
栄養バランスのとれた食事は、皮膚を守るために重要です。
栄養摂取の基本は、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランス良く取ることです。
現代の食生活では、炭水化物や脂質の高い食品が多く、皮膚や細胞を作る要素となるたんぱく質、身体の代謝や維持に必要なビタミン、ミネラルの摂取不足が問題となっています。
たんぱく質が豊富な食材は、肉、魚、卵、納豆などです。また、野菜や魚介類に含まれているビタミンA、C、Eや亜鉛、オメガ-3脂肪酸は皮膚の保湿力を高め、炎症を抑える効果があります。
良質な食材を積極的に摂取して、肌を守るように心がけましょう。
参照:栄養に関する基礎知識
皮膚そう痒症でよくある質問
皮膚そう痒症に関してよくある質問をご紹介します。
この内容を理解することで、皮膚そう痒症を深く理解することができます。
皮膚そう痒症は完治しますか?
皮膚そう痒症は、発症する要因によって完治するかどうか異なります。
乾燥肌が原因で発症する場合、日常のスキンケアを習慣化することで完治する可能性があります。
しかし、慢性的な皮膚疾患や内因性疾患(糖尿病、痛風、内臓癌など)を持っている場合、完治させるのは難しいかもしれません。
皮膚そう痒症に対しての治療法が確立されていないため、症状を和らげ、再発を防ぐことが最善の方法です。
皮膚そう痒症と癌は関係ありますか?
特定の癌治療によって皮膚そう痒症を引き起こす可能性があります。
特定の癌治療とは、化学療法、放射線療法、免疫療法があり、これらの治療法は皮膚に一定の影響を与え、皮膚そう痒症の症状を引き起こす場合があります。
ただし、皮膚そう痒症自体は、癌を発症する直接的な関連性は少ないと見られています。
皮膚そう痒症と老人性乾皮症は同じですか?
皮膚そう痒症と老人性乾皮症は、症状が似ているものの、異なる病気です。
老人性乾皮症とは、加齢に伴い皮膚の角層の水分保持機能が低下することによって皮膚が乾燥した状態を指します。
皮膚がひび割れたり、痒みを生じて皮膚炎を引き起こすリスクがある病気です。
治療方法は、市販の保湿剤などを使用したスキンケアが一般的で、症状がひどい場合は医師に相談しましょう。
まとめ:皮膚そう痒症を予防するために、毎日のスキンケアや健康管理を心がけよう!
今回の記事では、皮膚そう痒症について解説してきました。
皮膚そう痒症は、皮膚に明確な発疹がないにもかかわらず、長期間にわたって痒みを伴う疾患です。
痒みがどのように発生するかは、まだ十分に解明されておらず、確立された治療法も存在しません。
外用薬や内服薬を使用して症状を和らげ、食生活やスキンケアを整えることで予防するのが最善の方法です。
皮膚そう痒症に悩まれている方は、本記事を参考に、正しい知識を身につけて適切な治療と予防を実践してください。